Un giorno senza i contenuti 2

「……ん?」
 山本は、目の前に広がった平和そのものの町並みに、瞬きを繰り返した。
 そして、理解する。
「あ〜…10年バズーカに当たったな、「オレ」……」
 もう少し、あの時代の戦い方についてレクチャーするはずだったのだが、予定が狂ってしまった。あの状況で取り残されて本当に大丈夫なんだろうか。
 とりあえず、誰かに通報されないうちに、と刀を鞘の中へ仕舞う。
「それに、あの匣……」
 古ぼけた匣だった。獄寺はあんなもの何処で手に入れたのだろう。そして、この時代の獄寺は果たして使いこなせるのか。
 そして、思い至る。
「あっ、オレの匣……は、ちゃんと置いてきたな……」
 良かった、と胸を撫で下ろす。
 アレがなければ話にならないのだ。
「まっ、とりあえずはあいつらに任せるか〜」
 ボンゴレリングのない山本達にはどうにも出来ない問題なのだ。遅かれ早かれこうなることは、守護者の全員が分かっていたことだ。
 少し、遅すぎた気もするが。
 どうも、並盛町は感傷的になるらしい。……余りにも、色んなことがありすぎた。
「お、そーいや獄寺どこに居るんだろ」
 先に獄寺はこちらへと着いているはずだ。まずは合流するに越したことはない。
 山本は歩き始めた。目的地は唯一つ、沢田綱吉の家だ。
 そして、その勘は見事に当たっていた。沢田家へと続く道に、黒いスーツに身を包んだ彼が立っている。
「お、獄寺!」
「……!!」
 見知った背中に呼びかけると、傍目でも分かるくらいに肩が大きく震えた。
 つい先ほどまで隣に居たのに、久しぶりに会った気がするというのは変な気分だ。
「やっぱここに居たな、お前って分かりやす……」
「山本ッ!!」
 どん、と音がするくらいに勢い良く獄寺が山本の胸の中に飛び込んできた。顔を、その胸に押し当てるようにして抱きつく。
 その肩が小刻みに震えていることに既に気付いていたので、山本は優しくその背中を撫でた。
「お前…あそこでツナに会ったんだってな。………辛かったな」
「山、本……っ、や、…とぉ…っ」
 よしよし、と山本が抱きしめ直す。落ち着いてきたのか、獄寺も胸に当てていた手を放して、山本の背中に伸ばしてきた。
「オレも会ったぜ……ツナと、お前に」
「ご無事なんだ、ろうなっ」
 不安げな涙目が見上げてきて、思わず理性が飛びそうになるが、堪えて山本は安心させるように微笑んだ。
「当たり前だろ、オレが居たんだぜ?」
 心配すんな、と頭を撫でれば小さくこくりと獄寺が頷いた。
 珍しく素直なことに気付き、軽く目を見張る。そこまで衝撃的だったか。
 慰めの意味をこめて獄寺の体を撫でていた山本だったが、久しく抱きしめていなかったせいか、その腰が更に細く感じた。戦い続きで少し痩せたのだろうか。
 ゆっくりと腰をなで上げて、山本は首をかしげた。
「なあ獄寺……お前、少し細くなってねえ?」
「!! ……なっ、お前いつまで引っ付いてるつもりだ! 離れろ!」
 ぺいっ、と手を引き剥がされて、山本の手は所在無く宙に彷徨った。大体、抱きついてきたのはそっちではないのか。
 しかし、ぐすぐすと目に残る涙を必死に拭っている獄寺が可愛いので、許してあげることにする。
「はいはい……。んで? 奈々さんとかに挨拶……は出来ねえか、こんなナリじゃ」
「ああ……オレ達は、この時代には居てはいけない存在だからな」
 獄寺が呟きながらポケットから出したサングラスをかけた。涙目を隠したいのだろうか。
 やはり可愛く思えて、山本はそんな獄寺の額を小突いた。
「バーカ、居ちゃいけないなんてことがあるかよ。オレが居て、お前が居ればそれでいいだろ?」
「……山本…」
 な、と微笑む。
 しかし、浮かない顔で獄寺が小さく呟く。
「……10代目は、いらっしゃらないんだ…どこにも……」
 重く、悲しい現実。どうしようもない、事実。
「……どこにも…っ!」
 まるで刃物を吐き出すように叫ぶ獄寺の頬を思わず平手で打った。
 パンッ、と高い音がした。獄寺が、反射的に山本の胸倉を掴む。
「テメッ、何しやが……」
「馬鹿野郎!」
 山本は首を締め付ける獄寺の手に自分の手をかけ、力を込めた。
 この痛みで、伝わればいい。繋がればいい。
「そのために今俺たちがココに居るんだろうが! お前が何も見ないようにしてるだけで、現状はちゃんと動いてるんだぞ! 苦しいだろう、辛いだろう、そうだろうさ! でもな、苦しいのも辛いのもお前だけじゃないっ! オレだって…、オレだって……っ」
 熱いものがこみ上げてきて言葉に詰まる。
 この一年間の思い出したくない思い出が、ぐるぐると頭を巡る。
 でも、この時代のファミリーが頑張れば、どうにかできるかもしれないのだ。否、どうにかなるのだ。
「なのに、お前が信じてなくてどうするんだ。俺達を、…ツナを信じなくて誰を信じるんだ。俺達が信じなくて……誰が…」
 声が震える。獄寺の手を握る手もどうしようもなく震える。
 すとん、と獄寺の手が外された。
「悪い……悪かった、どうかしてた」
「いや…オレこそ、悪かった」
 握りすぎて真っ赤になっている手首を、優しく擦る。
 本当は獄寺も分かっているのだ。頭で理解していても、感情が伴わないだけなのだ。そして、山本自身も。
 大人になったとはいえ、まだまだ自分も彼も子供なのだろうか。
 気まずい沈黙が流れる。
 ふと、こちらを伺いつつこそこそと通ってゆくおばさんと目が合った。
「……! あ……」
 改めて自分たちの姿を顧みる。黒いスーツ、サングラス、そして刀。どこからどう見ても怪しい以外の何者でもない。
「な、……なあ、オレ達結構目立ってると思うのな? だから、場所変えようぜ?」
「そ、そうだな…」
 あはは、と苦笑いしつつ、獄寺の提案で獄寺のマンションへ向かうことにする。
 獄寺のマンションは一人暮らしのため、何かと都合がいいのだ。
 獄寺の方が先にこの時代に来ていたのだから、自分の家に既に向かっていたものと思っていたが、獄寺は一日目をホテルで過ごしたのだそうだ。
「い、…いっとくけどな、あんまし綺麗じゃねーぞ」
「気にしない、気にしない! あ〜、でも火薬とか散乱してねえだろうな?」
「……して、るかも…」
 ええ、と山本が大げさに仰け反る。この頃の獄寺は寝る間も惜しんで新しい技を研究していた。学校で会う度に寝不足度が増す獄寺を見るのが辛かった思い出がある。
 懐かしいな、としばらく思いを馳せていると、ドアの前で獄寺が唸っていることに気付かなかった。
「どうしたんだ、獄寺」
「いや、……鍵がねえんだ。当たり前だけど」
 なるほど。それは大変だ。
 山本は胸ポケットから小さなピンを二つ取り出すと、鍵穴の前にしゃがみこんだ。
「獄寺、ちょっと周り見張ってろな」
「は、……、な、ちょ…っ」
 遠慮なくピンを鍵穴に突き刺すと、感覚を頼りに少しずつ動かしていく。俗に言うピッキングというやつだ。
「お前、鍵壊したら承知しねえからな」
「だーいじょうぶだって、伊達にお前に諜報でこき使われてねえよ…っと」
 かちゃり、と手ごたえがして、山本はにこにことピンを抜いた。
「オレ、諜報は向いてねえけど、ピッキングだけは上手かったのな」
「自慢にならねえよ、バカ」
 そのピッキング技術を教えたのは獄寺だったが、そんなことは棚の最上段に上げる。
 ぽかり、と山本の頭を叩いて獄寺はドアを開けた。自分の家なのに、他人の家に入るようだ。
「お邪魔しま……って、結構綺麗じゃねえか」
 綺麗というよりは、生活感が感じられないといったほうが正しいか。
「何か……何もねえな」
「家なんて、帰って飯食って寝るだけだろ?」
 すたすたと廊下を歩き、寝室とリビングの合体した部屋を開ける。
 後ろをついていき、ひょこ、と顔を覗かせると、そこには一応机とベッドと簡易クローゼットが置いてあったがやはりどこか足りないような印象を受ける。
「家って大切だぜ? ただいまって言える幸せっつーかなんつーか……」
「ねーよ、んなもん」
 ベッドに座った獄寺は呟く。室内を物色していた山本は獄寺の声のトーンが下がったのに気付いて振り返った。
「ねーよ、……んなもん」
 ぎゅ、と獄寺が二の腕をきつく握り締める。
 山本も獄寺の複雑な家の事情を少なからず知っていたので、それ以上は流石に言えず、ゆっくりと獄寺の近くまで移動した。
「他の誰がお前を待っていなくても、……オレだけはお前を待ち続ける。お帰りって……言うためにな」
「………」
 獄寺の顔を隠しているサングラスを優しく取り上げる。隠されていたライトグリーンの瞳が、山本の瞳を見つめる。
「お帰りって、お前に言うために」
 ベッドに腰掛ける獄寺の前に跪いて、もう一度静かに宣誓すれば、獄寺がおずおずと山本の頬を包んだ。
「……ほ、んとか?」
「ああ」
「…お前だけは、居なくならない……?」
 山本という存在を確認するように、獄寺の手が頬を撫でる。
「もちろん」
「オレを、一人にしない…?」
 当たり前だろう、と微笑んで獄寺の手に自分の手を重ねる。
「お前を一人になんか絶対にさせない。もし、……死ぬときが来たとしても、絶対にお前だけは一人にしない。させない」
 淀みなく言い切ると、獄寺は山本の首に抱きついた。
「何か……オレ、今日ガキみたいだ…」
「そうだな」
 獄寺を抱きしめ返して、あはは、と笑えば獄寺は少し震えた声でバカと囁いてきた。
「……この時代の獄寺にも何回もバカって言われたな」
「当たり前だ、バカ。……ってか、変なことしてねえだろうな!」
 今更ながらに重大なことに気付いて、獄寺は声を上げた。
 耳元で叫ばれたものだから、流石にうるさくて山本は体を放した。そして、むくむくと湧きあがる悪戯心に忠実に口を開く。
「変なこと? ……どんなこと?」
 にやにやと山本が獄寺を見上げる。獄寺はさっと赤くなり、そっぽを向いた。
「変なことは…変なことだっ! 分かるだろーが、茶化すんじゃねーよ」
「いや? オレはわかんねえから聞いてんだぜ? 例えば、…こんなことか?」
 更に意地悪く囁きながら、山本は獄寺の腰をなで上げた。先ほどしたのとは違い、ゆっくりと、形を確かめるように。
「…はっ、…」
 ゆらり、と微かに腰を揺らし、獄寺は山本から逃げるようにベッドの中ほどまで後退した。しかし、それは山本の望みどおりの行動である。空いたスペースに自分の体を割り込ませる。二人分の体重で、小さなベッドが軋んだ。
「それとも、……こういうことか?」
「やま、もと、…もう止め、…っ」
 唇の端を小さく舐めると、一気に唇を奪って舌を口腔内へと捩じ込む。
「んっ、…ン、……っぁ、…ん…っ」
 久しぶりに味わった獄寺との口付け。やはり甘美なことには変わりなく、しばらくして獄寺も自発的に舌を絡める頃には、山本はそのキスに酔っていた。
 最後に下唇を舐めて口を離せば、二人とも息はすっかり上がってしまっていた。
「ごめん、獄寺。……してないよ、信じて?」
「分かってる……」
 半分熱に浮かされたような顔をしている獄寺が、山本の口元にある傷を舌で撫でた。
 ごくり、と山本の喉が鳴る。
 それは、獄寺が誘っている印だ。
「久しぶりだから、加減できねえかも」
「いらない…。早く、…お前が欲しい」
 山本のネクタイを解こうとしている獄寺の手を掴んで、ベッドに押し倒す。その勢いで、再び二人は唇を重ねた。一瞬、歯がぶつかり合う。しかし、その衝撃さえ二人には快感に思えた。お互いに全てを奪おうとするかのような口付けを交わす。息継ぎをする間が惜しい。
「んぅ…っ」
 口付けながら、器用に山本は服を脱ぎ、脱がしていった。
 獄寺の白人らしい真白い肌が、少しずつ露出していく。
「………あっ」
 ついに全てを曝け出させると、口付けを解いて、山本はその美しい肢体を見つめた。視線に晒されて、頬を染めた獄寺が恥ずかしいのか微かに身を捩る。
 そんな様子が可愛くて、山本はなだめるようにまぶたに口付けた。
「大丈夫……すごく、綺麗だよ」
 そう呟けば、獄寺の頬が更に赤くなる。益々可愛い。
 キスをする位置を少しずつずらしていく。頬から唇、首筋を通り、鎖骨を一舐めした後、胸へ。胸の飾りを小さく舐め上げれば、獄寺の体がぴく、と震えた。
「あ、っ」
 一つトーンの高い嬌声が聞こえたのを確認すると、山本は焦らすようにその周囲をぐるぐると舐め続けた。
「んっ、ぁ…」
 獄寺の息が更に上がっていく。
 本当はもう少し焦らしてやりたいところだが、逆に山本自身が辛くなってきたので、そろそろ本格的に愛撫することにする。
 下肢に手を這わせる。既に存在を誇示しているものを優しく撫でれば、獄寺の体が大きく震えた。
 その反応に気をよくして、山本は緩急をつけてそこを攻め始める。
「あっ、あぅ、……ひ、あぁっ」
 根元から絞り上げるように擦り上げ、先端を抉じ開けるように愛撫すれば、獄寺の口からは嬌声しか上がらなくなる。
 とろりと溢れ出る蜜も手伝って、山本の手の動きは一層激しくなった。
「…やま、も…っ…、ん、ぁ、っ……もっ、もぅ…っ」
 切れ切れに懇願するのを聞いて、山本はもう一方の手を双丘へと伸ばした。山本もそろそろ本気で限界だ。
「……ちょっと、…待って、な?」
そこは、流れ出た液体で既に濡れそぼっている。入り口を探り当て、山本は円を描くようにその周りを撫でた。ひくり、と不随意筋が異物を拒絶するように収縮するが、それでも、優しく擦り続ける。時には獄寺の吐き出した蜜を指に絡ませながら。
「ぅ…、は、ぁ……っ」
 何度目かの往復の時、一瞬筋肉が緩んだ。その瞬間を待ってましたとばかりに、山本の指が深々と獄寺に侵入した。
 は、とその衝撃に獄寺の体が仰け反る。しかし、逃げようとはしない。それが嬉しくて、山本は優しく指を動かした。何かを探すように、ゆっくりと内壁に指を滑らせる。同時に、きつい中を解すようにかき混ぜるように動かす。
 その一つひとつの動作に過敏に反応して、獄寺は声を上げた。
「あっ、あ、……ん…ぅ」
 やがて、山本の指がある一点を探り当てる。
 にやり、と笑って、山本はそこを強く擦り上げた。
「あ、ぅん!」
 思ったとおりの反応に、山本は嬉しそうにそこばかり執拗に攻め続けた。
「ここ…か?」
「やっ、…あぅ、あっ…いやぁ、…あッ!」
 もはや痛みすら感じるくらいの過ぎた快感に、獄寺は首を左右に激しく振った。
 いつしか、陵辱の指は三本に増えていた。バラバラに動くその指がもたらす刺激に追いつけない。
「や、……も、っ……むりっ、はやく……き、て…っ」
「ああ、オレも……もう待てない」
 指を引き抜き、今度は自身の高ぶりを押し当てる。その指の比ではない熱さと質量に、獄寺は息を呑んだ。
「いくぞ……」
 山本が体重を更にかけたため小さいベッドが更に悲鳴をあげた。
 しかし、そんな軋んだ音をかき消すかのように、甲高い悲鳴が部屋にこだます。
「あ、あ、…あっ……!」
 痛みと衝撃に耐えるように、獄寺の手が山本のそれを求めて彷徨った。山本はすぐに気付いて指を絡ませるとしっかりと握り締めた。
「大丈夫か、獄寺……」
 全てを埋め終えて、山本は汗で額に張り付いた銀の前髪を優しく梳きながら囁く。
 獄寺は小さく頷いて、焦点の合わない瞳を懸命に山本に合わせようとした。
「お前だから……大丈夫…、だか、ら……早く…っ」
「…ごくでらっ」
 言葉が終わらないうちに、山本は腰を進めていた。
 打ちつけ、打ちつけられてお互いの身体が快楽に高ぶる。
 もう、何が良くて何が痛いかなどは関係なかった。そこに自分が居て、相手が居て、そしてお互いに深いところで結ばれあっている。それだけで、二人は最高の歓びを分かち合えた。
「っ、…はやと…ッ」
「は、あっ…ん、ぁっ、…も、だめ、だめ…っ」
 たけし、と獄寺が普段呼ばない呼称を呼んだ瞬間、二人の快楽は真っ白になって弾けた。
 エクスタシーに包み込まれる一瞬、獄寺の脳裏には様々な顔が浮かんでは消えていった。会いたい者、そして会いたくても会えない者。全てが泡のように膨らんでは弾けて消えていく。
 獄寺の眉尻から涙が零れ落ちた。
 後戻りは出来ないと分かっていても、後ろを向くのを止められない。待っていても来ないと分かっているのに、前進を躊躇う。
 でも、と思う。
 自分に熱を与えてくれるこの男だけは、自分の傍に居てくれる。
 後ろに気を取られれば、頬を張って前を向かせてくれる。
 前に進むのを戸惑っていれば、優しく背中を押してくれる。
 つくづく、自分には勿体無い男だ。でも、そんなことをわざわざ伝えて、この男を有頂天にさせる気は更々ない。
「……はっ」
 迸りを注ぎ込み、山本が熱い息を吐く。そのまま、力尽きたように山本が獄寺の隣に倒れ込む。
 獄寺が吐き出した精が腹の辺りに飛び散っていて、感触はあまり良くないが、それでも素肌を触れ合わせるのは気持ちがいいものだ。
 しばらくはこうしていたいが、そんなことをしたら獄寺の熱に包まれたままもう一度高ぶらずにはいられないに決まっているので、山本は名残惜しみつつ獄寺の中から自身を引き抜こうとした。
「……待て、山本…」
 獄寺が、足を腰に巻きつけてきた。山本が動きを止めて獄寺を見つめると、獄寺は淫蕩に微笑んだ。
 涙に塗れた緑の目が、山本を誘惑する。
「も……少し、このままでいて…。お前を、感じたい」
 きゅ、と形を確かめるように内部が収縮した。走った鋭い快感に、山本はすぐに反応する。
「獄寺……」
 獄寺の指が、山本の口元に伸びる。その傷を撫でる。
「オレを離すな。どんな時代(とき)でも……どんな場所でも…」
「………ああ」
 久しぶりに見た獄寺の笑みに、山本は厳かに宣誓のキスをした。
 離さない。絶対に離れないし、離せない。
「お前を好きになったときから…それは決めてんだ」
 再び始まった律動。熱く溶ける吐息。
 それら全てが交じり合って、絡まりあって、二人は再び高みへと階段を駆け上がって行く。
「…愛してる……」
 焼け付くような思考の中で、果たしてどちらが先に呟いたか。
 そして、二人は同時に頂点を極めたのだった。指先をしっかりと絡め合わせたまま。

おまけ

 大人の身体には少々小さいベッドに、二人は並んで横になっていた。情事の後らしく、二人とも一糸纏わぬ姿だ。
 獄寺が、その白く細い指で器用に新しい煙草の箱を開け、煙草を口にくわえる。それを見た山本が直ぐにライターを差し出す。何時の間にか、これは習慣になっていた。
「いつも思ってんだけど、お前、吸わねえのに何でライター持ってんだよ」
「獄寺が吸うからに決まってんじゃん」
「はぁ?」
 くわえ煙草の獄寺が胡乱気な瞳を向けてくる。山本はにこりと笑うと、手でそのライターを弄び始めた。
「オレは、獄寺にとってのライターになりたいのな」
「………はあ?」
 更に訳がわからないと首を傾げる。
 ふ、と山本が静かに笑うとごろん、と仰向けに寝直した。
「今すぐ欲しいのは煙草。だけど、ライターがないと煙草は吸えない。だから煙草以上にライターが大事」
 山本が芝居かかった口調で言うので、獄寺は思わず吹き出してしまった。
「で、お前はその大事な大事なライターだっていうわけか?」
「そ」
 余りに嬉しそうに頷くので、獄寺は呆れを通り越して笑えて来た。
「じゃあ…お前には、地の果てまででも火を点けに来てもらわないとな」
「おう、いつでもオイルは満タンだぜ」
 するすると獄寺の尻を撫でながら言うので、別の意味にどうしても取れてしまい、獄寺は赤面した。
「ばっ、馬鹿野郎っ! スケベジジイかテメェは!」
「え〜、オレそんなこと言ってないけどな〜」
 言っただろ、とはいえなかった。そんなことを言ったら深い墓穴を掘るだけだと獄寺はこの二年間で強く感じていた。この正真正銘スケベジジイは、言質を取っては身体を求めようとしてくるのだ。
 こんな男だと知らなかったら……否、それでもこの男に惹かれているのだから仕方がない。
「とっ、とりあえず、風呂だ風呂!」
 獄寺は逃げ出すために、点けたばかりの煙草を揉み消し、立ち上がった。しかし、腰に響いた鈍い痛みに再びベッドへと沈み込む。
 結局、欲望に負けて三回戦まで経験してしまった獄寺の腰は、酷使しすぎだと悲鳴をあげているのだ。
「どうした、獄寺?」
「……〜〜〜〜!」
 分かっているのに、にこにこと聞いてくるから更に酷いのだ。
「この……スケベジジイがッ!」
「はいはい、じゃあオレが責任持って風呂までお運び致しますよ」
 同じだけ運動したはずなのに、山本は実に軽い動作で獄寺を横抱きに抱きかかえた。そのまま部屋を横切って風呂場まで向かう。
 先ほどまで嫌というほど触れ合っていたのに、こうして再び触れ合うとどうしても赤面してしまうのを抑えられない。山本もそれを分かっているようで、風呂場までの短い距離をうきうきとした足運びで進んでいる。殴ろうかとも思ったが、この男の嬉しそうな様子を見るのは嫌いではないので止めておく。
 獄寺は諦めて瞳を閉じ、山本に身体を預けた。
 程なくして、獄寺の予想通り風呂場からはシャワーの音以外に温く湿った水音が聞こえ始める。
 深い口付けを享受しながら、獄寺はそれもまた嫌でないことを知る。
 理性も羞恥も全て奪い取られて、最後に残る裸の心は、確かに目の前の男を欲しがっているのだ。
 ふと、獄寺は先ほど山本が自分のことをライターだと言っていたことを思い出した。
 山本という強い炎が、獄寺の深いところに火をつけるのだ。煙草に火をつけるよりも容易く、そして長く。そして、獄寺は燃え上がる。
「……やまもと」
 苦しい息の最中に山本の耳元で囁く。山本は動きを止めず、しかし相槌と共に耳を傾けた。
「……あいしてる」
 殆ど吐息のような言葉に、それでも山本は嬉しいのか笑みを深めた。
「ああ、……知ってるよ」
 それは、いつだかの意趣返しなのだろうか。獄寺もつられて快感に引き攣った笑みを浮かべる。
 熱い欲望の切っ先が、獄寺に甘い悲鳴を上げさせた。
 確かに、山本は獄寺にとって大事な大事なライターなのかもしれなかった。

後書き(といいつつ実は言い訳

まず。……ついにヤっちまいましt(殴
何か、すっごいバカップルでごめんなさい……!>< 私の中で未来の山獄はラブラブなんです!(死語
山本は基本的に絶倫ですが(何;;)……そうやって絶倫にさせてるのは他でもない獄寺ですからね(笑
もう、もう……どうにでもなれ!!(ヲイ
ハプニング大賞……獄寺(ごくでら)を誤変換、ゴキ出た(ごきでた)(酷;;

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